流した涙は、努力の証
「いいか、女子日本一を狙うぞ!」
監督の突然のひと言で、それまで何の目標もなくのんびりドッジボールを楽しんでいた私たち女子チームは大きな夢へ挑戦することになりました。しかし8月26日に行なわれる「ガールズカップ全国大会」まであと3ヵ月。「日本一への挑戦」は考えもつかない地獄のような日々の始まりでした。
早速、次の練習から男子チームと同じ練習が始まりましたが、スピード、パワー、知識、経験、その差は私たちの想像以上でした。男子チームは県内でもトップクラスで、まともな練習をしていなかった私たちが勝てるはずがありませんでした。しかし勝てなかったら、監督は容赦なくペナルティーを与えました。しかも、それが自分のせいでも、全員が責任を負わなくてならなかったのです。それがつらいから一生懸命に練習をしました。
「自信がない奴は努力しろ!」
監督の怒鳴り声に涙する日が続きました。毎日、うだるような暑さの中、汗が出なくなるほど、いくつも青あざをつくりながら。練習の激しさに倒れる者が続きました。それでも誰一人として「やめたい」とは言いませんでした。
猛練習で私たちは男子チームとも対等に戦えるようになりました。ところが、その自信からがむしゃらさがなくなり、練習がやけにしんどく感じられてきました。
全国大会まで残り一ヶ月。身の入らない練習に、突然監督が
「お前ら、帰れ!」
と、叫びました。さらに、
「全国大会まで練習はなし。ぶっつけ本番でやれ!」
と、びっくりする言葉が出ました。その瞬間、自信が一気になくなりました。
次の練習の日、監督は私たちに練習をさせてくれませんでした。「時間がない。もうダメかも…」みんなが不安になった時、監督は、
「練習をしなかったら不安になるやろ。だから練習するんや。やらされている練習ならするな!」
と、練習の意味を教えてくれました。練習の再開を許された私たちは、残された時間、全力で練習をしました。
8月26日。ついに大会の日になりました。会場の東京体育館に着くと、そのあまりの大きさに驚き、緊張しました。
予選。私たちのブロックには、優勝候補の東京や神奈川などの強豪チームがいっぱいいました。しかし、苦しい練習のおかげで信じられないほど力が出せて、見事全勝で予選を勝ち抜きました。
そして決勝トーナメント。激戦の予選ブロックを勝ち抜いた私たちは、大爆発。準々決勝、準決勝とすごい強さで勝ち上がっていきました。
さあ、決勝戦。夢にまでみた瞬間がやってきました。相手は強豪「大分ドリーム」。これまでがんばってきたすべてを出そうと、私たちはがんばりました。
第1セットは取ったものの、第2セットを落とし、試合はついに最終セットにもつれ込みました。第2セットを落とし、ベンチに引きあげる選手の中には、もうすでに泣いている子もいました。そんな私たちに監督は、
「泣くな! お前らは何のためにここまでがんばったんだ。泣くんだったら勝ってから泣け!」
と、目を真っ赤にして叫けびました。こみあげる涙を抑え、再びコートに向かった私たち。しかし、この最終セットがとんでもないことになったのです。
なんと試合が9対9の同点でタイムアップ。決着はどちらかが当たれば負けというサドンデス勝負になったのです。一つのミスも許されません。私たちがこれまで経験したことのないプレッシャーがかかってきました。一球一球にどよめきが起こる中、最後の力を振り絞って戦いました。しかし…。
アウトコールが館内に響きました。「負けた…」その瞬間、全員がコートに泣き崩れました。あふれる涙をふきながら、私たちは夢の舞台から降りていきました。短い夏、でもとても長く感じた夏が、ついに終わりました。
私たちがもらったメダルの色は銀ですが、ここまでがんばった自分には金をあげたいです。
天理ボンバーズの歌に「流した涙は、努力の証」という歌詞があります。
ほんの少し前までは何も感じなかったこの言葉の意味が今は痛いほどわかります。
これからもこの言葉を頼りにいろんなことに挑戦していきたいと思います。
ガールズカップ全国大会で学んだこと
(天理市教育委員会「体験発表会」より)